レムすいみん（書き直し）

眠り続けるから

たたき起こすのだとしたらそれは、



*レムすいみん*

雨の音で目覚めたのだった。



暗い陰鬱な空を想像する。
カーテンの向こうは薄暗い。



ぬくい布団にくるまって眠っていた。
薄く開けた目で彼の姿を捉える。
温度は自分だけのものではなかった。
そう確認し彼女は寝返りをうつ。安堵で。









「起きたのか」








先に起きていたと見える彼は隣で
体を起こし本に視線を落としていた。







「おはようございます」








彼はうんと返し、視線を本に落としたまま彼女の頭をくしゃりと撫でた。
随分と照れがなくなったものだと彼女は思い、
しばし、下から、視線を落とした彼の顔を見つめていた。



















少しして、
彼が彼女に尋ねた。















「幸せってなんだと思う？」











本から視線を外さない。

そういう題の本なのだろう。





「………真面目に？」
「真面目に。」






彼女は真面目に考えこんだ。
彼はそんな姿を密かに嬉しく思い、言葉を続けた。








「ガキの頃は。ひたすら遊んでたらふく食って、寝ればそれで満足だったんだが」
「そんな単純な子供時代だったとは思えないんですけど」
「根本は単純にできてた」
「そうですか」
「でも今はそんなんじゃ満たされない」
「でしょうね」
「大人になったからなのか。貪欲になったもんだと思う」















「そうですか？」







彼女は大きく目を開けて、それが当たり前だと疑わず言った。







「今だってあなたは、温い布団があって、本があって、あとそれから、
隣に私がいれば、満足でしょう？」
「………」
「ほら。なんにも変わらないじゃないですか」







ほんの少し呆気にとられた彼になど気づきもせず、彼女は欠伸を一つ。






「……そうかもな。」














私がいれば満足だろうなんて
自信過剰にもほどがあるが
あながちはずれていないので否定はしないでやる。
と、いうのが彼の心情で。


彼は、欠伸一つも、愛しくなってしまった。


ぽっかり開いた口にキスしてしまおうか？
そのまま彼女をのみ込んでしまいたい。
別にやらしい意味じゃなくて。








　　　　小さな頃からの願いを
　　　　叶えてくれたのは、なんだ
　　　　あんただったのか。









彼は本を閉じた。









さて。














「なぁ、」
「はい？」
「肩が冷えた」
「あらあら」














彼女が彼の首に腕を回す。
彼は引っ張る力に従ってベッドに落ちる。










「あったかいでしょう？」
「うん」





ぎゅっと、彼が彼女を抱きしめると
ほんの少しだけ彼女は強張って、





「あ、の」
「あったかいよ」
「はぁ」
「凄いなあんた」





その言葉のくすぐったいこと。
彼女はたまりかねてにやけてしまった。





「鳴海さん、変」





弁解が難しいので聞かないフリで
しかしそんなことより今はもう





「なぁ、」















「二度寝しよう」









レムすいみん
（今以上に触れいていたいんだと　貪欲がぼくらを叩き起こすまで）